「特定技能」ビザ創設で、即戦力は海外に求める時代へ
目次
人手不足に外国人労働者を雇えるかどうか?
日本はこれまで、外国人労働者を受け入れることに消極的でした。 単純作業を担おうとする海外の若者に、就労ビザは発給されませんでした。 日本の大学で学んだ留学生は、専攻した学問と関連性の強い業務にしか就けないようになっていました。 例えば、日本でデザインを学んだ留学生が、ホテルチェーンに就職してフロントデスクで働くということはできなかったのです。 留学生が自ら望み、ホテルがその外国人を採用しても、ビザが下りなかったからです。 しかし政府は、これから始まる本格的な人手不足を解消する手段の一つとして、外国人を労働者として受け入れる方向へと舵をきりました。 それが2019年4月から始まった新しい在留資格「特定技能」です。 次に挙げる特定14分野であれば、海外にいる外国人を社員として採用し、学歴や実務経験を問うことなく呼び寄せることができるようになりました。(ただし、日本語能力や技術水準等に関する要件はあります) 例えば、旅館やホテルなら、フロントやレストラン、企画・広報の仕事を担当し、それらに付随する館内販売、清掃、備品の点検等に従事することが可能になりました。分野別運用数等について
分野 | 受け入れ見込み数(5年間の最大値) | 1号→2号への移行 |
---|---|---|
介護 | 60,000人 | 不可 |
ビルクリーニング | 37,000人 | 不可 |
素形材産業 | 21,500人 | 不可 |
産業機械製造業 | 5,250人 | 不可 |
電気・電子情報関連産業 | 4,700人 | 不可 |
建設 | 40,000人 | ○ |
造船・舶用工業 | 13,000人 | ○ |
自動車整備 | 7,000人 | 不可 |
航空 | 2,200人 | 不可 |
宿泊 | 22,000人 | 不可 |
農業 | 36,500人 | 不可 |
漁業 | 9,000人 | 不可 |
飲食料品製造業 | 34,000人 | 不可 |
外食業 | 53,000人 | 不可 |
2019年からの5年間で、最大34.5万人の受け入れを計画しています。 ただし、分野ごとに受け入れ人数は決められており、その人数に達した分野から「特定技能」ビザは交付されなくなる予定です。
「特定技能」で、 外国人があなたの会社にやってくる!?
「特定技能」のビザを得るには、本人にかかる要件として次のようなものが挙げられます。要件
・18歳以上であること
・健康であること
・保証金を徴収されていないこと
・違約金を定める契約を締結していないこと
・自らが負担する費用がある場合、その内容を十分に理解していること
・「技能実習2号修了者」もしくは「特定技能評価試験及び日本語試験の合格者」のどちらか
学歴の要件がないばかりか、実務経験は要求されていません。ただし、技能試験に合格することは求められています。
技能実習2号を修了して母国へ帰国した外国人は、その修了した分野と同じであれば技能試験や日本語試験が免除になります。
求人方法
どこかの機関を介さないと採用できないというルールはありません。直接雇用が可能です。派遣雇用ができるのは、農業と漁業の分野のみです。 新聞、雑誌、インターネット、SNSを通じて 2. 職業紹介事業者からの紹介 3. 取引先、自社従業員からの紹介雇用の流れ
募集
面接
内定
採用基準は、「技能実習2号を修了している」もしくは「特定技能評価試験及び日本語試験の合格者」のどちらかであることが、前提です。
契約 「特定技能雇用契約」を締結
- 特定技能雇用契約で定めなければならないとされている内容
-
- 従事する業務
- 労働時間
- 報酬額
- 差別の禁止
- 有給休暇
- 生活状況の把握
- 派遣先に関するもの(農業・漁業のみ派遣雇用が可能)
- 帰国の旅費
外国人労働者が特定技能雇用契約を終えて帰国する際の旅費は本人負担が原則です。しかし、その従業員にそれができない場合、受け入れ機関である会社が帰国費用を負担しなければなりません。
また、帰国のための航空券の購入なども雇用先がサポートする必要があります。
帰国費用を確保するために、外国人労働者の報酬から控除するなどして積み立てそれを雇用先が管理することは認められていません。
雇用契約は相手がよく理解した上で取り交わすものです。注意点として、「内定者の母国語をはじめとする、相手がよく理解できるできる言語に翻訳した文書の作成」です。後々のトラブルを避けるためにも、ぜひ翻訳文は渡しておきましょう。
「1号特定技能外国人支援計画」を策定する
日本で生活するうえで、仕事をしていくうえで必要となる支援を誰がどのようにするのかを具体的に決めていきます。 受け入れ機関(会社)のみでこれを実施するのが無理な場合、外部(登録支援機関)に委託できます。
在留資格認定証明書交付申請
外国にいる採用予定者を呼び寄せるため、受け入れ機関(会社)が、就労ビザ申請の準備をします。
- 標準処理期間:1カ月~3か月
- 手数料(収入印紙):不要
- 申請先:外国人の居住予定地もしくは受け入れ期間の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署
在留資格認定証明書交付(日本で交付)
会社が在留資格認定証明書を外国人本人に送付(日本→外国へ送付)
本人が在留資格認定証明書を、在外公館へ提出、査証(ビザ)申請(外国で手続き)
査証(ビザ)発給 (外国で手続き)
日本入国&在留カードの発給(日本)
パスポート、査証(ビザ)、在留資格認定証明書を提示
「1号特定技能外国人支援計画」に基づき支援スタート
雇用開始
在留資格認定証明書交付申請とは?
就職や留学、結婚、一緒にビジネスを始めるなどの理由で、海外にいる外国人を呼び寄せるときに必要なのが「在留資格認定証明書」です。 これは、後日、正式な在留資格を取得するときの引換券のようなものです。 在留資格認定証明書は役だつ場面が2度あります。 1度目は、外国人が在外公館で査証(ビザ)の申請をするときに、2度目は、日本へ入国する際に、それぞれ審査が迅速に行われるというメリットがあります。 ただ、この書類を持っていることが、査証(ビザ)や在留資格(ビザ)の発給を保証するものではありません。 3ケ月以内にこれをもって入国しなければ、失効してしまいます。在留資格認定証明書、申請できるのはだれ?
・申請人(本人) ・申請人を受け入れようとしている期間の職員などの代理人 ・申請取次者 (主に申請取次行政書士) 海外にいる外国人のために行う手続きですので、この場合は、申請取次行政書士に委託するのが一般的です。登録支援機関とは?
外国人雇用の難しさは、定着させることにあります。 採用しても、すぐに辞められたのでは、会社としても負担が大きくなるばかりです。 日本語学習の支援や住宅確保、口座開設のサポートなど、きめの細かいサポートが欠かせません。 特定技能ビザの外国人労働者を受け入れるにも、「1号特定技能外国人支援計画」の策定が条件として挙げられています。 外国人の支援までは手が回らない受け入れ機関に代わって、支援計画の作成や、特定技能1号の活動をサポートするのが「支援機関」です。 受け入れ機関は、特定技能のビザを持つ外国人従業員のサポートを支援機関に丸投げしてもいいですし、自社で面倒をみつつ、できない部分のみを業者などに委託することもできます。 当事務所でも以下のようなサポートサービスを行っています。- 空港から会社までの送迎サポート
- 住民登録同行サポート
- 口座開設同行サポート
- 携帯電話手続き同行サポート
- マイナンバー有効期限の延長手続きサポート
- 日本の運転免許への切替サポート
- 外国人従業員を受け入れる職場の作り方ガイダンス
- 外国人従業員への生活オリエンテーション
家族の帯同
「特定技能1号」は、家族の帯同は認められていません。これが原則です。しかし、大学や短大の留学生時代、すでに家族が「家族滞在」の資格で日本に滞在している場合は例外のようです。 法務省は、特定技能1号にビザを切り替えた留学生に帯同している家族も、「特定活動」の資格で、引き続き日本に滞在できる人的措置をとっているといいます。 家族を帯同できる留学生に、日本語学校で学ぶ専門学校生は含まれません。そして、家族滞在のビザを申請する際には、留学生自身に家族を扶養する“力”があることが条件です。一年間家族が生活できる資金がある、継続的に援助してくれる第三者がいる等・・・そして、その預金はどうやって形成されたものか?第三者とはどのような関係の人物なのか?いつまで援助してもらえるのか?などを詳細に説明できなければなりません。さらには、留学生は週28時間内という厳しい就労制限があります。以上からすると、家族滞在のビザをもつ留学生というのは、ごく少数派ということになります(2020年1月時点)。5年で帰国、それでも人手不足にならない方法
特定技能ビザには1号と2号があります。「特定技能2号」が設けられているのは、今のところ「建設分野」と「造船・舶用工業分野」のみです。特定技能1号 | 特定技能2号 | |
在留期間 | 1年、6ヶ月、4カ月 (通算上限5年まで) | 3年、1年、6か月(通算上限なし) |
家族の帯同 | 認めない ※原則 | 要件満たせば可(配偶者、子) |
受け入れ機関の支援 | 対象 | 対象外 |
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