2021.01.28

特定技能 企業が受入機関になるための要件

受入機関適合性を図る基準

基本的な要件と基準

在留資格「特定技能」の創設で、外国人の雇用を検討する企業はさらに増え始めました。人手不足を解消するため、初めて外国人の受入れを検討する企業も出てきました。当事務所にも、「うちの会社で外国人を雇えるのか?」「外国人の採用は、日本人の採用と手続きはどう違うのか?」といった質問が多く寄せられるようになりました。そこで実際に特定技能外国人を受入れる機関として必要な要件や基準について紹介していきます。

在留資格「特定技能」については「現場の人手不足を解消する方法、教えます!」で詳しく紹介しています。こちらも合わせてお読みください。

日本標準産業分類

在留資格「特定技能」は、特定技能外国人を受入れる機関(企業)が特定産業14分野に該当していることが必要です。特定産業分野は、以下の通りです。

  • 介護分野
  • ビルクリーニング分野
  • 素形材産業分野
  • 産業機械製造分野
  • 電気・電子情報関連産業分野
  • 建設分野
  • 造船・舶用工業分野
  • 自動車整備分野
  • 航空分野
  • 宿泊分野
  • 農業分野
  • 漁業分野
  • 飲食料品製造業分野
  • 外食業分野

中でも、素形材産業分野、産業機械製造分野、電気・電子情報関連産業分野、建設分野、自動車整備分野、宿泊分野、農業分野、漁業分野、飲食料品製造業分野、外食業分野は、「日本標準産業分類該当性要件」があるとされています。つまり受入機関等が、各分野の運用要項が定める一定の日本標準産業分類に該当していなければなりません。「日本標準産業分類該当性要件」があるかどうかは、行政書士などの専門家の判断を仰ぐのがベストです。ちなみに、日本標準産業分類は一事業所ごとに決めていきます。

雇用契約が適切であること 

日本企業で社員を雇用する場合、雇用契約を結ぶことは実際あまりないかもしれません。しかし特定技能外国人を採用する際は、「特定技能雇用契約」を書類で結ぶことが必要になってきます。「特定技能雇用契約」は次のような基準が求められています(出入国在留管理庁の資料から抜粋)。

特に、「業務内容」「日本人と同等以上の報酬」「外国人の健康や生活の状況を把握するための措置」は重要ポイントです。

特定技能雇用契約は、一度結んだらおしまいではありません。その後、定期的な届出が必要になります。雇用契約に記載されている「業務内容」から、特定技能外国人が従事する業務内容でない業務に変更となった場合等の“変化”にも届出が必要です。日本人であれば社内だけの話で終わってしまう配置転換も在留資格の関係から(外国人は在留資格で許可された範囲でしか活動できないため)簡単には行えなくなることもあります。

それらを考えると、外国人を採用する場合、法的な縛りがかなりあることを知った上で雇用計画をたてるべきです。

当事務所は外国人雇用コンサルティングも行い、豊富な法知識をもとに外国人の雇用計画の相談を承っています。お気軽にご相談ください。

受入機関自体が適切であること

納税義務を果たしているかどうか、企業側の責任で技能実習生や特定技能外国人の行方不明者を出していないか等、外国人を雇う企業としてふわしいかどうかが問われる基準です。

また、特定技能雇用契約を締結する日前の1年以内に、特定技能外国人が従事する業務と同種の業務に従事していた労働者(定年、自己都合、有期労働契約の期間満了、自己の責めによる重大な理由により解雇された者等を除く)を離職させていないことも必要です。外国人を採用するために日本人を解雇することがあってはなりません。意外と見落としがちなチエックポイントなので、気を付けてください。

支援体制が整っていること

外国人が日本で暮らし、日本で働く。その日々を支援するのも受入機関の責任です。ただし、「登録支援機関」に支援を全部委託する場合は受入機関としてこの基準は免除されます。

支援の中立性

外国人労働者を支援する上で大切なことは、支援の中立性を確保できているかという点です。そのため、だれが支援責任者になるかが大事です。

外国人と同じ現場で働く人は、支援責任者にはなれません。当該1号特定技能外国人と形式上異なる部署の職員であっても、組織図を作成した場合、タテのラインにある者は適格性がないとされています。つまり、社長は支援責任者になれません!また、当該1号特定技能外国人が所属する部署を監督する長も、支援責任者にはなれません!例えば、製造課に所属する当該外国人の支援責任者として製造部の部長はふさわしくないということです。社長と数人の社員だけという小さな会社の場合、中立性を確保した支援体制を構築・維持するのは難しいと思われます。

そのようなときは、「登録支援機関」に業務を委託することで支援の中立性を確保できるようになっています。ただし、月々3~5万円程度の費用はかかってきます。登録支援機関に何をお願いするのか、どの登録支援機関にお願いするのかによって料金もさまざま・・・いろいろな会社や専門家が「登録支援機関」になっているので、問い合わせてみてはどうでしょうか。

適切な支援計画が立てられていること

在留資格「特定技能」を申請する際、支援計画書も提出します。これは受入機関が考え、受入機関が書類を作成するのが本来のスタイルです。登録支援機関が書類の作成を行うことはできません。法律違反となってしまいますので、注意してください。

受入機関が基準に適合しなくなった場合、その受入機関での就労は「不法就労」となってしまいます。すると処罰の対象になりかねません。受入機関が受け入れ困難となった日から14日以内に、届出をしなければなりません。怠った場合、過料を科せられるほか、届出を怠ったこと自体が受入機関“失格”の烙印を押され、特定技能外国人を5年間受け入れらることができなくなる可能性があります。

上乗せ要件

上記はあくまでも、特定技能外国人を雇用したいと考える受入機関の基本的な要件や条件にすぎません。個別の上乗せ要件がある特定分野もあります。例えば建設分野の場合、「建設業許可を取得していること」「建設キャリアアップシステムに登録していること」「JACに所属していること」等です。

このように、事業所は各分野ごとに決められた要件をすべて満たさなくてはなりません。そして「誓約書」において事業所要件を満たしていることを誓約します。もしここで、事業者要件を満たしていないのに“満たしている”と偽り外国人を雇用してしまうと、「在留資格等不正取得罪」が成立します。ちょっとした書類上の誤魔化しが、とんでもない事態を招いてしまうことになります。

外国人を雇う条件が整っていない事業所なのにそこで外国人が働くと、「不法就労活動」になります。働く外国人は「資格外活動罪」に問われることもあれば、問われないこともあります。でも、雇った事業所はもれなく「不法就労助長罪」になると思っていたほうがいいでしょう。事業所要件を満たさないで特定技能外国人を雇った場合、不法就労活動に当たるとは知らなかった・・・という言い訳は通らないのです。それくらい企業の責任は重く問われます。

このように、特定技能外国人を採用する場合、特に専門的な知識や最新の情報が必要になってきます。外国人雇用の専門的知識をもつ当事務所へ、お気軽にご相談ください。

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