2022.10.14

建設で特定技能、採用方法は3通りあります!

技能実習、建設就労者からの移行が人気


人手不足に悩む、建設業界の現状

総務省の「労働力調査」によると、建設業界における就業者の高齢化は平成13年を境に年々進んでいます。55歳以上が3割超を占め、29歳以下は1割もいません。建設産業界の担い手不足には、次のような理由が挙げられます。

  • 建設投資の減少により、建設企業の倒産が進み、技能労働者の離職が進んだ
  • 技能労働者の高齢化が進み、退職者が増えた
  • 建設業の産業処遇改善が進んでおらず、若者にとって魅力ある職種になり得ていない

この状況を放置すれば、将来にわたるインフラの維持管理や災害対応を地域で担う人材の不足につながり、私たちの暮らしが脅かされる事態となります。そこで政府は、中長期的な観点から必要な人材を確保できるよう外国人労働者を受け入れるために在留資格の創設などを整備しています。

“建設現場”で働ける外国人の在留資格は何か?

外国人が日本で働くには、就労ビザが必要です。現在、就労ビザは19種類用意されており、建設現場で働く外国人就労者向けには「技能実習」と「特定技能」の2種類が用意されています。そして、就労ビザではありませんが、法務大臣がそれぞれの外国人に固有の活動許可を与える在留資格「特定活動」を得て働くこともできます。

「技能実習」は、国際貢献のために作られた制度で、外国人が就く作業内容は細かく決められ、祖国へ日本の技術を持ち帰るという最終目的があります。2015年から受入が始まった外国人建設就労者(特定活動)は、「技能実習」を3年間終えた人のために、2022年までの時限措置として運用されている制度です。

 

2023年の3月末時点で建設業界においては約21万人の人手不足が予想される中、政府が本格的に推し進めているのが2019年4月にスタートした「特定技能」です。5年間で、特定分野全体で33.5万人、建設だけで約4万人の受け入れを予定しています。

特定技能で、優秀な外国人を採用する効果的なルート

特定技能で外国人を採用するには、主に3つの方法が考えられます。

  • ケース1:在外の外国人を募集する
  • ケース2:日本で募集する
  • ケース3:技能実習2号修了生、外国人建設就労者から募集する

ケース1とケース2は、いずれも日本語能力試験と技能試験を海外もしくは日本で受けなければなりません。

ケース1は、日本語レベルが「N4」での来日になりますので、どこまで日本語でコミュニケーションをとれるかが、採用する側にとっての不安要素になります。また、面接は海外にいる候補者とテレビ電話などで行うことになり、実際に直接会ったことのない人の採用を決定しなければなりません。日本と外国、その距離感は、候補者が働くにあたっての来日時の費用負担とともに、企業サイドの腰をおもたくしてしまう要素になっているようです。

ケース2は、日本語学校や専門学校の卒業生が想定されます。日本語レベルに問題はなくても、雇用するにあたって候補者がどのレベルの技能を現場で発揮してくれのか?実務経験はどのくらいあるのか?などの不安がつきまといます。

その点、ケース3は日本で一定の期間働いたことがある人ばかりなので、技能面においても、日本語レベルにおいても、問題は少ないと見られます。

このように見ていくと、これからは技能実習2号修了者や外国人建設就労者受入事業における「特定活動」の人が、「特定技能」の優秀な候補者として企業からの人気が高まっていくのではないでしょうか。特定技能は技能実習と異なり、転職が可能です。これからは、企業が外国人就労者を選ぶのではなく、外国人就労者が企業を選ぶ時代になっていくともいえます。

 

特定技能の特徴

在留資格「特定技能」の特徴を挙げてみます。

建設分野における「特定技能」の特徴
  • 受入人数   :5年間で40,000人
  • 家族帯同   :不可(1号の場合)
  • 賃金     :日本人と同等額以上で月給制
  • 目的     :人手不足解消
  • 転職     :可能
  • 受入機関の義務:建設キャリアアップシステムへの加入、技能習得、資格取得の促進

特定技能受入対象職種の大拡大!!

2022年8月に建設分野において業務区分が大きく変わりました。在留資格「特定技能」で受け入れることのできる業務は、それまで19区分でした。建設業に係る作業であっても、その19区分に該当しない限り「特定技能」としてうけいれることができませんでした。

見直し後は、建設業に係るすべての作業を「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3区分に変わりました。

従来の19区分を新業務区分で見ると、次のようになります。

「土木区分」
型枠施工、コンクリート圧送、トンネル推進工、建設機器施工、土木、鉄筋施工、とび、海洋土木工
「建築区分」
型枠施工、左官、コンクリート圧送、土木、屋根ふき、鉄筋施工、鉄筋継手、内装仕上げ・表装、表装、とび、建築板金、吹付ウレタン
「ライフライン・設備区分」
電気通信、配管、建築板金、保温保冷

 

在留資格上の業務区分は、作業の性質をもとにした区分であり、作業現場の種類による区分ではありません。そのため、従事する作業については、「土木」「建築」「ライフライン・設備」の現場を問わず従事可能です。

技能実習から「特定技能」への移行

「土木区分に該当する、技能実習生・外国人建設就労者の職種」
さく井、型枠施工、鉄筋施工、コンクリート圧送、ウェルポイント施工、建設機械施工、鉄工、塗装、溶接
「建築区分に該当する、技能実習生・外国人建設就労者の職種」
建築板金、建具製作、建築大工、型枠施工、鉄筋施工、とび、石材施工、タイル張り、かわらぶき、左官、内装仕上げ施工、表装、サッシ施工、防水施工、コンクリート圧送施工、築炉、鉄工、塗装、溶接
「ライフライン・設備区分に該当する、技能実習生・外国人建設就労者の職種」
建築板金、冷凍空気調和機器施工、配管、熱絶縁施工、溶接

 

技能実習、外国人建設就労者の受入れ対象である25職種すべてが、「特定技能」に受入れ可能になりました。すでに母国へ帰ってしまった元技能実習生であっても、特定技能外国人として日本で働くチャンスが拡がりました!

建設業許可と特定技能の業務区分との関連

「土木区分に対応する建設業許可」
さく井工事業、塗装工事業、しゅんせつ工事業、造園工事業、大工工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、塗装工事業、石工事業、防水工事業、機械器具設備工事業、とび・土工工事業
「建築区分に対応する建設業許可」
大工工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、塗装工事業、石工事業、防水工事業、機械器具設備工事業、とび・土工工事業、内装仕上工事業、建具工事業、左官工事業、タイル・レンガ・ブロック工事業、清掃設備工事業、屋根工事業、ガラス工事業、解体工事業、板金工事業、熱絶縁工事業、菅工事業
「ライフライン・設備区分に対応する建設業許可」
板金工事業、熱絶縁工事業、菅工事業、電気工事業、水道設備工事業、消防施設工事業

 

特定技能外国人が従事する建設業の種類ごとに、それぞれ対応する業務区分の認定をうけることで、特定技能外国人も従事することができるようになります。

特定技能を受入れる企業がなるべきこと

技能実習制度では、失踪者が相次ぎました。特に顕著なのが建設分野で、全体の53.8%を占めています。(2012年度の全失踪者数7167人のうち、建設分野は3838人で約54%を占める)。同じ過ちを犯さないように、政府は、建設分野の受け入れ企業がすべき義務的項目をいくつも定めています。主なものは次の通りです。

建設業法第3条許可の取得

JACの加入

建設キャリアアップシステムへの登録

特定技能雇用契約に係る重要事項の説明

特定技能雇用契約の締結

建設特定技能受入計画の認定申請

特定技能外国人支援計画の作成

事前ガイダンスの実施(3時間)

在留資格変更許可申請又は在留資格認定証明書交付申請

受入れ後、外国人雇用状況の届け出

生活オリエンテーション(8時間)

受入れ後講習の受講(FITS)

技能実習生を受け入れた企業の役8割に入管法をはじめとする法令違反が8割超あるといわれています。「人手が足りない!」「外国人の雇用を検討している!」と思われている企業様、個人事業主様は、プロへご相談ください。行政書士 たにぐち事務所は、あらゆる方面から、外国人雇用をサポートいたします。

JACへの加入義務

特定技能外国人を受入れる企業は、特定技能外国人受入事業実施法人(建設技能人材機構:JAC)に直接又は間接的に加入しておく必要があります。ここが、特定技能外国人に対して「入国後研修の実施」「求職求人マッチングによる就職や転職の支援」「母国語相談窓口による相談対応、助言指導」を、受入企業に対しては「特定技能外国人へのあっせん」「巡回訪問、指導・助言の実施」などの支援を行います。

受入企業は、次の正会員団体のいずれかに加入もしくは(一社)建設技能人材機構に賛助会員として加入していれば、特定技能外国の受入はいずれの職種でも可能です。

2020年現在で正会員39建設業者団体、賛助会員は420社となっています。

 

国交大臣の認可&在留資格申請の2段階方式

建設分野の特定技能ビザは、第一段階として国土交通省による「特定技能受入計画」の審査、認定を受け、次に出入国在留管理庁による在留資格認定証明書交付申請や在留資格の変更申請を経てようやく認められるものです(国土交通省の認定を受けなければ在留資格の申請ができないというわけではありません)。

他の在留資格の申請手続きに比べ1段階分作業が多くなるため、書類作成にかかる時間等は通常の倍くらいかかるものと思われます(国土交通省、出入国管理庁、審査にかかる標準処理期間はそれぞれ概ね2カ月程度)。

そのため、特定技能ビザを少しでも早く取得するため「国土交通省」の審査結果を待たずに「出入国在留管理局」へ書類を提出しても問題ありません。ただ、特定技能受入計画が承認されれば国土交通省から交付される「認定書」がなければ、特定技能ビザも取得できません。スケジュール管理によって、在留資格取得の時期が大きく異なってきます。専門家に相談すれば、より早くビザを取得できる可能性が高くなります。

以下、国土交通省のHPより抜粋しました。

○ 主な審査基準は以下のとおりです。
 (1) 同一技能の日本人と同等額以上の賃金を支払うこと
 (2) 特定技能外国人に対して、月給制により報酬を安定的に支払うこと
 (3) 建設キャリアアップシステムに登録していること
 (4) 1号特定技能外国人(と外国人建設就労者との合計)の数が、常勤職員の数を超えないこと

 特に[1]の審査にあたっては、大都市圏その他特定の地域への集中を防止する観点から、同一技能の日本人の標準的な報酬額とのチェックを行い、必要な場合には、是正の指導を行うこととしています。

○ 今般、制度開始後初めて、以下のとおり「建設特定技能受入計画」の認定を5件行いましたので、お知らせします。

【「建設特定技能受入計画」の認定を受けた企業】                       

  所在地 職種(試験区分) 送出し国 人数 基本給(月額)
静岡県 鉄筋施工 ベトナム 1人 230,000円
神奈川県 コンクリート圧送 ベトナム 4人 280,000円
東京都 内装仕上げ ベトナム 1人 230,000円
千葉県 内装仕上げ 中国 1人 243,250円
神奈川県 コンクリート圧送 ベトナム 2人 265,500円
 
<参考> 建設分野における2号技能実習生の平均賃金:168,201円/月、 外国人建設就労者の平均賃金:221,343円/月
(平成30年度 外国人建設就労者受入事業に係る受入状況実態把握調査)

上の資料からは、様々なことが読み取れます。例えば、日本人が時給1600円で働いている場合でも、特定技能外国人は月給制でなければなりません。安定的な給与の支給が求められているからです。もし「時給制」で書類を作成して提出してしまうと不許可になってしまうので、注意してください。

また、認定基準として受入企業は「建設業法第3条の許可」を受けていることが必須です。500万円以下の工事しか請け負っていないから不要とは考えずに、ここは必要になってきます。

コロナ特例措置、建設キャリアアップシステム登録に関して

コロナ感染症拡大の影響を受けて、建設キャリアアップ登録に関して次のような特例措置が取られています。以下、国交省のHPより引用します。

・建設特定技能受入計画の認定に当たっては、受入企業に対し、建設キャリアアップシステム(CCUS)の事業者登録及び外国人材に係る技能者登録を求めているところですが、
今般、CCUSの運営主体である(一財)建設業振興基金より、新型コロナウイルスによる感染症拡大防止のため、当面の間、CCUSの登録に係る審査業務等を縮小して行う旨の報告がありました。
 (詳細)https://www.ccus.jp/Corona/suspension
・これを受けて、建設特定技能受入計画の認定に当たっては、CCUSの登録完了を求めるのではなく、CCUSの登録申請を行ったことを証する書類(以下の書類の(1)又は(2))の提出をもって認定要件を満たすものとします。
 (1)CCUSのインターネット申請の場合:CCUSから配信される、申請番号が記載されたメール
 (2)CCUSの郵送申請の場合:(一財)建設業振興基金より発行される、申請証明書 (詳細は(一財)建設業振興基金にお問い合わせください。)
   ※郵送申請の際の申請証明書は、発行までに時間を要することがありますので、お急ぎの場合はインターネット申請をご活用ください。

在留資格「特定技能」の申請は、要求される書類の数が多いとされています。なおかつ建設分野は出入国在留管理庁の審査のみならず、国土交通大臣の審査・認可も受けなくてはなりません。プロに任せてみませんか?当事務所では、丸投げで申請業務を受けています。どうぞお気軽にご相談ください。

※法務省;特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領

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